かつて橋もなかったころのインドー
大河ガンジス川のガート(沐浴場)で沐浴する人たちが対岸を眺めながら、
『こちらの岸(此の岸)には苦しみや悩みなど、つらいことばかりあるけれど、きっとあちらの岸(彼の岸)には幸せがあるに違いない』と、、、
そう思ったのでしょう。
私はこれが「彼岸」の考え方だと思っています。
でも本当は、彼の岸にも悲しみや苦しみは存在するのです。
仏教の「彼岸」とは、
苦しみ多き「此の岸」を私たちの智恵や行いによって、幸せと思い、平安と思える世界を作り上げることの大切さを説いています。
もうすぐお彼岸です。
私たちはー
暑い暑いと思って、早く涼しくならないかと思っていても秋の彼岸が過ぎればやがて寒さに文句を言います。
寒い寒いと思って、早く暖かくならないかと思っていても春の彼岸が過ぎればやがて暑さに文句を言います。
あちら(彼の岸)に幸せがころがっているわけではありません。
私たちの行いと考え方と豊かな知恵でもってー
こちら(此の岸)を住みやすく幸せに思える世界(彼岸)をつくることが大切ですよ・・・、
と諭しているのが、お彼岸だと思うのです。
ちなみにー
山中伸弥先生を先頭に世界に先駆けたiPS治療の臨床治療が始まって7年が経ちました。
多くの難病患者、とりわけ網膜治療に次ぎパーキンソン病、そして脊髄損傷、心筋治療へと当事者が夢見た最新治療の研究も成果も積み重ねられています。
まさに日々苦しむ難病患者に寄り添い、苦しみ多き「此の岸」を「幸いなる彼岸」に変えようと、多くの研究者や先生方が努力してくださっています。
本当にありがたいことです。
私たちはー
彼岸を契機として、置かれた場所で、自分にできる方便で「幸いなる彼岸」をつくる意思を心に留め置きたいものです。
令和3年秋彼岸
合掌
(写真はガンジスで沐浴する老母:1989年撮す)

